2024年8月に厚沢部町で設立された(株)ASKAの、吉田藍代表取締役にお話を伺いました。

会社の概要について教えてください。
私を含む3戸が、それぞれ個人経営を続けながら、協同で会社を設立しました。
今はWCS(ホールクロップサイレージ)の受託栽培を中心に進めていて、今後は地域の農地を守っていくための受け皿になることを目指しています。
会社設立のきっかけを教えていただけますか?
会社をつくることを考え始めたのは、地域の担い手不足や規模拡大が進む中で、個人の力だけではこれからの農業を維持できないと感じたことがきっかけです。「今は何とかできているけれど、この先20年、30年続けられるのか」と思うと、農業を個人ではなく“組織”として引き受けられる体制をつくる必要があると考えるようになりました。
ちょうどその頃に「水田活用の直接支払い交付金」の要件が見直され、その対応策としてWCS栽培を考えました。これを個々で行うのではなく、しっかり組織として対応するため、同じ考えを持つ3戸で会社を設立することにしました。
その後、地域の農家さんにも声をかけ、4戸から委託栽培の依頼をいただくことになり、令和7年のWCS作付面積は約100haとなりました。
法人化したことで得られた具体的なメリットは何ですか?
まず、補助事業に取り組みやすくなったことです。大型機械を導入するときも法人名義で申請できるため、手続きがスムーズに進みました。
次に、作業の効率が大きく上がりました。法人化によって作業を共同で進める体制になり、刈り取り、集草、ロールづくりなどをそれぞれが分担して同時に進められるようになりました。
また、社会保険料の負担が軽くなったことも実感しています。役員報酬を調整することで、個人で国保に加入していた頃より負担を抑えられるケースもあります。
何より大きいのは、農地や機械を“会社として”引き継げる体制ができたことです。後継者が会社を継ぐことで、農地も機械も一緒に守りやすくなり、次の世代につなげやすくなると感じています。
日々の忙しい経営の中で、どのようにリフレッシュされていますか?
冬の間はジムに通い、トレーニングをしたりサウナに入ったりして気分を整えています。温泉にもよく行っています。リフレッシュの時間をしっかりとることで、また気持ちよく仕事に向かえるようになります。
今後の目標を教えて下さい。
まずは会社の運営を安定させ、しっかり形にしていくことを大事にしています。
そのうえで、畑作についても会社として本格的に取り組んでいきたいと考えています。今は個々の作付と会社の受託作業が並行していますが、少しずつ会社主体の作付に移していくつもりです。
また、機械や農地などの経営資源を会社に集約することで、将来的に会社として農地を引き受けやすくなる体制をつくっていきます。
さらに、トラクターやコンバインを扱えるオペレーターを雇用し、育てながら作業の幅を広げていきたいと考えています。
最終的には、農地を会社として引き継げる仕組みを整え、地域の農地を守り続けられる体制を確立していくことが大きな目標です。
法人化を検討している方へのメッセージをお願いします。
法人化を考える方にお伝えしたいのは、まず税理士さんや社労士さん、会計事務所に相談することの大切さです。法人化すると社会保険や税金の仕組みが大きく変わるので、仕組みを理解しないまま進めると負担が想像以上に重くなる場合があります。特に社会保険料は役員報酬で大きく変わるので、慎重に検討する必要があります。
共同で会社を運営する場合は、仲間との考え方の共有が何よりも重要だと感じています。役割分担や作業の進め方を事前に話し合っておくことで、運営がスムーズになります。
また、法人化によって事務作業が増えますが、最初にしっかり整理して進めれば後々楽になります。今の負担だけを見て判断するのではなく、将来の経営や農地の継承まで見据えて決めることが大切だと思います。

